トクベツ、な想い
第4章 4
後はデザートのみ、と…
なんだかどっと疲れた
もしみゆちゃんと付き合ったら
こういう感じのデートになるのかな…
テーブルマナー…ちゃんと調べておこうか…
考え事をしていて放心状態だった俺の顔を
みゆちゃんが心配そうに覗いてきた
「すいません、もっとラフなとこが良かったですか…?」
「…あ、いや…うまかったよ」
安心させるように微笑んで返した
折角用意してくれたのに…本音は言えない
「良かった…櫻井さんこういうイメージだったのでちょっとふんぱつしました」
「え…俺なんて全然、ちゃんとしたとこなんか滅多に行かないよ?」
「そうなんですか…?
私にはその…王子様みたいに見えてるので…」
王子様…
そりゃ王子様はこういうとこくるかもしれないけど…
あまりに高い自分の評価に唖然としてしまった
「そりゃ…すごいな
俺、全然そんなんじゃないよ?普通のおっさんだよ?」
「ち、違います!」
「っ…!」
今までに聞いたことのないみゆちゃんの大きな声に驚いた
他の客とウェイターが何事かとこちらを見る
なんでもないと2人で頭を下げた
「ご、ごめんなさい…大きな声出しちゃって」
「いや…いいけど、ビックリした」
真っ赤な顔をして俯くみゆちゃんを見て少し笑ってしまった
「…櫻井さんは私が会社に入った時、色々教えてくださいましたよね…?」
「あぁ…そうだったね
覚えがよくてすごく優秀だった、今もだろうけどね」
「いえ、櫻井さんの教え方が分かりやすくてすぐ覚えられたんです
大学出てすぐで、バイトもしたことなかったから不安で…仕事できるのかなって思ってたんですけど…優しく教えてもらえて嬉しかったんです」
みゆちゃんの表情がほんわりと緩くなっていく
俺は入った頃の彼女を思い出しながらその顔を見ていた
最初は同じ企画チームで働いていたんだけど
開発の方へ抜かれて
企画としても開発としても優秀で…
思ってる途中、ウェイターが近付いてきた
手に持っていた小さい丸皿には
それより一回り小さい丸い苺のショートケーキが乗っていて
真ん中には1本の火の点いたロウソクと
『HAPPY BIRTHDAY SHO SAKURAI』
と書かれた丸いホワイトの板チョコがささっていた