トクベツ、な想い
第1章 1
「今回はEA部との新年会だってよ」
「…なんか久しぶりだな」
「だろ?なんかうちの部長とEA部の部長が仲悪かったらしくて、でも去年部長かわったんだって」
「なるほど…」
よく知ってんなと思いながら待田とそのまま一緒に会社を出て会場に向かった
-襖を開けると広い座敷には
縦に2列、キレイにいくつもの御膳が並んでいた
もうすでに何人かうちの部とEA部の人達が座っている
席は特に決まってなかったので
待田と静かに入って適当に腰をおろした
しばらくして全員揃い、うちの部長が立ち上がった
「-では皆様お揃いのようですので僭越ながら私が乾杯の音頭をとらせていただきます
今回は運用、保守部は他の部との新年会になりましたので人数は少ないですが-…
…体に気を付けて今年も頑張っていただきたいと思います
では、乾杯!」
「乾杯!」
長い話を終え、全員持ったグラスを前につきだす
拍手が会場を包むと次々に料理や酒が運ばれてきて
久しぶりのコンビニ以外の食事に食欲が湧いてきた
去年の忘年会は待田も俺も参加しなかったしな…御膳なんてホント久しぶり…
「うんめっ」
どれを食べてもそれしか出てこない
食べてるなーって気がした
食べてたけど、食べた気しなかったしな…
「良かった良かった、痩せる一方だったもんな
やっぱ櫻井はそうじゃなきゃ」
「っ…ゴホッ」
すでに顔が真っ赤な待田を見て噴き出しそうになる
「ハッ…っ、早くね?
まだ2杯目でしょ?」
「酔ってはないよ?
すぐ赤くなるだけだって、知ってんだろ?」
そっか
待田ともあんまり飲みに行かなくなったから忘れてたわ
まぁまぁまぁと言いながら待田のグラスにビールを注ぐ
お返しにと俺のグラスにも注いでくれて…
なんだかくすぐったかったけど
プライベートでも仕事でもいつも気にかけてくれる待田に感謝の想いも込めて″ありがとう″とお礼を言った
「なんだよ、やめろよー」
照れ笑いをしだす待田
…だってホント感謝してる
同僚とはいえ俺より1つ年上だけど、そんな感じしなくて
でもはっきり言う時はなんだか兄ちゃんみたいで…ちょっと顔が桐谷○太に似てる
「俺、部長にお酌行ってくるわ」
「あ、俺も」