トクベツ、な想い
第5章 5
しばらくそのままテレビを見て
眠気が来る頃、画面の端にある時間を確認しタバコを灰皿に押し消した
暗い寝室のベッドに潜り込み
しっかり布団にくるまったところでiPhoneがブーっと鳴る
ビクッと体が跳ねて眠気が一気に飛んでしまった
慌ててiPhoneを手にとると潤からで
『お疲れ様です
資料、役に立って良かったです
飲みの件ですが、忙しくなってきてしまってダメそうです
また次回、おやすみなさい』
そう返ってきた
来ないかと思っていたので文を読んでホッとした
「やっぱり忙しいのか…
あれ、絵文字使わなくなったんだ…」
前は短い文でも1個はあったのに…
まぁ男だもんなと深くは考えなかった
俺もお休みと送ってまた布団にくるまる
あれは気のせいだったのかもしれない
でもちょっと傷ついたな…
―定時間近に待田が立ち上がる
「EA部行くけど、お前もなんかある?」
「いや…特にないかな」
「そ」
紙を何枚か持ってだるそうに歩きだした待田をイスに凭れつつ、ただなんとなく見ていた
廊下に出た時、たまたまなのか潤が通った
待田が呼び掛けると笑顔で話をしていた
声も話もうっすらしか聞こえなかったが
きっと頼み事をして、承諾した感じだろう
紙を受け取った潤が横目にこちらをちらっと見て、すぐに視線を戻した
やっぱり気のせいじゃないのか…?
いつもは笑ってくれるじゃんか…
少し話をしてから待田が笑みを見せながらこちらに戻ってきた
「何、見てたの?」
「うん…ずっと」
「そんな好かれてもな…俺彼女いるし」
髪をかきあげカッコいいアピールをしていたが鼻で笑ってやった
…結構序盤でお前からは視線逸れてたよ
「…忙しいって?」
「いや、そんなんでもないですよーだって」
「…運用の方から仕事あるとか言ってなかった?」
「別に言ってなかったけど…なんかあんの?」
「いや…」
忙しいって言ってたのはもしかして嘘か…
なんでだ…
定時のチャイムを聞いて帰りだす人とイスに座って残る数人
俺ももう少し…
そうぼんやりと思った頭の中は、潤に無視されているのかもしれないという小さなショックでいっぱいだった