トクベツ、な想い
第6章 6
ピンポーン…
しんとした部屋にインターホンの音が響く
「…え……誰…」
重い体を起こしさっきと同様、壁を支えに手をついてゆっくり玄関に向かい足を進めた
そんなに激しくはないが咳が出る為
来た人に移してはいけないと、たまたま買ってあったマスクの袋から1枚とって耳にかけた
モニターを確認して目が見開いていく
額に汗がじわりと溢れた
すぐに開けたい気持ちが、うまく機能しない体のせいで比例せず
それでもよれる足を出来るだけ早く進ませ
まだ届かないドアにもどかしく手を伸ばして歩いた
勢いよくドアを開ける
「…潤…どうして…」
俺を避けているはずの潤がそこには立っていた
潤は目を泳がせながら無言で中に入ってくる
手にはスーパーの袋をぶら下げていた
「ちょ…潤、ダメだ移るから!」
中に入ろうとする潤の肩を力なく押す
少し声を張っただけなのに頭がズキッと痛んだ
「っあ…てー……っうわ!」
痛みを抑えようと頭に片手を置いたら急に足が浮きだした
潤が俺を担いでいた
慌てておろしてとせがむ
でも潤は相変わらず無言で、俺の言葉を無視して
寝室に向かい、どんどん歩いていく
途中、テーブルに袋を置いて
寝室に入るとベッドにゆっくり座らされた
座った俺と同じ目線になるように腰を落とし
そっと顔を覗き込んでくる
久しぶりに目が合った
潤を、ちゃんと見た
なんだか弱っていた俺の心にぐっと込み上げるものがあって鼻がツンとした
「…潤…」
マスク越しに力なく呟くと涙が溢れてくる
それを見た潤はぎょっとした顔をし、片手を俺の頬に添えた
「熱…高いですね…」
俺に向けられた声も久しぶりに聞く
今の俺には刺激が強くて
溢れた涙は止めどなく頬を伝い、マスクと潤の手を濡らしていった
困った顔をしている潤を見たまま
止めたくても止まらなくて…
きっとそれは熱のせいだろうとふわふわした頭で考えていたら、意識がどんどん遠ざかっていった
俺の体が後ろに倒れていくのがうっすら分かる
閉じる目の先で潤が必死な顔をして俺の名前を呼ぶ
何度も何度も呼ぶ声が
頭の中に心地良く響いていた