トクベツ、な想い
第6章 6
気が付くとベッドにしっかり入っている俺…
「夢…」
潤のことを考えてたから…か
そう思ったが額に何かあることに気付いた
手を伸ばして触ってみるとどうやら冷えピタのようだ
ひんやりした頭の下には氷枕が敷いてあって
夢じゃないことが感じられた
俺の部屋に潤がきてる…
いや、もう帰ったかもしれないが
でも…もう訪れないと思っていたシチュエーションに胸がキューっとなった
嬉しい…
今はそれを素直に受け止めた
寝室のドアの向こうでなんだか音が聞こえる
まだ…いてくれてるのか?
少し咳払いをしてから
マスク越しに、ドアを挟んでじゃ聞こえないかなと思いつつ本当か確かめたくて
いつもより掠れた声で呼んでみた
「…潤?」
返事はない
やっぱり聞こえないか…
「翔くん、起きた?」
カチャっと開いたドアの隙間から遠慮気味に潤の顔が覗いた
「じゅ…ん、ごめん、これありがとう」
本当だったとうわずった声を上げお礼を言うと少し笑って頷いてくれた
「食欲ありますか?
お粥作ってあるんですけど…良かったら」
「え…まじ?ありがとう」
「勝手にキッチン使ってすいません」
「そんなの全然、いいよ」
微笑みながら″持ってきます″と言ってドアから顔が引っ込んだ
無視されてたことが嘘みたいに会話が出来てる…
笑い掛けられてる…
それだけでこんなにも嬉しい…
底が深い器とレンゲを持って潤が寝室に入ってきた
溢れかけてた涙を目をパチパチとさせて止める
ゆっくり体を起こしマスクを外すと
朝より全然いい気がして顔をペタペタ触った
「辛いですか?」
「いや…大丈夫」
器とレンゲを受け取り
少し息をかけ冷ましてから口に運んだ
「うまっ」
顔がほころんだ
人が作ってくれたご飯なんていつぶりだ…
「…料理うまいね」
「勉強中なんですけど、家でもよく作るようにしてて…まぁこれぐらいなら全然」
「俺これも作れないわ」
「不器用だもんね」
「…悪かったな」
笑いながら器にある分を食べきった
まだあると言うので持ってきてもらい、食べられるだけ食べた