トクベツ、な想い
第7章 7
―次の日の会社帰りにまた潤の部屋へ行った
今日も会社に来ていないと聞いて
俺と同じように風邪だったらいいけど…いや良くはないけど
もしかしたらインフルエンザかもと心配が募る
「あ…昨日の袋掛けっぱなし…」
ドアノブに昨日のまんまの姿でぶら下がっていた袋
中身を確認してみても何も取った形跡はない
取りに来れないくらい深刻なのか?
俺は38℃で玄関までの距離が結構しんどかった
インフルエンザってそれ以上の熱だろ?
なったことはないけど普通の風邪より辛いって聞くから
取りに来れてないのもおかしくないかもしれない
今日出なかったら管理人を呼んで開けてもらおう
それでホントにインフルエンザだったら
俺に嫌がろうがなんだろうが病院に連れて行こう
急に不安が押し寄せてきた
出てきたことを考えて、潤にと買っておいたマスクだが1枚だけ拝借して一応しておくことにした
心の準備をしてインターホンを押す
…出ない
ドアを拳で数回叩いて呼び掛けてみる
「潤、櫻井だけどいたら返事してくれ」
…反応はなかった
やはり深刻なのか…気持ちが焦る
今度は強めにドアを叩いてみた
「潤!避けてでもなんでもいいから
無事ならそうだって言ってくれ
それで大人しく帰るから、頼む!」
耳をドアに押し付けるが、何も聞こえない
仕方ない、管理人呼ぶか
潤の部屋から近いエレベーターへ足を向けると、隣の部屋のドアが開いた
茶髪の若い男性がこっちを見るなり睨んできた
見た目からして大学生くらいか…
「あ、すいません…うるさかったですか?」
「…ちょっとね…あんた隣の人と知り合い?」
「…はい」
「あの人しばらく帰ってないよ、たぶん
俺ずっと部屋にいるから…隣の人のドアの音聞こえてくるけど最近全然しない」
この人はニートなのかな…
って今はそんなことどうだっていい!
ブンブンと頭を横に振って、その子にぐっと近寄った
「いつからとか分かりませんか?」
「え、うーん…3、4日前…とかかな」
俺が潤を追い出してからだ、きっと
「くそっ…ありがとう」
「あ…うん」
お礼を言いつつ
もう必要のないマスクをとるとすぐにマンションから出た