トクベツ、な想い
第7章 7
それを聞いた女の子が
俺と潤の腕を″両手に花″というように掴んだ
「イケメン2人でなんて燃えるー」
バカかこの子は!
すぐに掴まれた手を振り払うと潤からも剥ぎ取って
嫌がる潤の手を引きそのままラブホの外へ連れ出した
すぐに追いかけてきた女の子をキツく睨み付ける
なんなの?と怒った顔を向けながら何処かに行ってしまうその子を見て
心の中で何回もごめんと謝った
連れ出した潤を見ると
同じように去っていく女の子を目で追っていた
「…あーあ」
もしかして俺の部屋を出ていってから、ずっとこんなことしてたのか?
そりゃ言い合いになったけど…それでこれ?
どんな荒れ方だ…
「帰るぞ…」
そう言って腕を引けば当然のように振り払われる
視線は相変わらず冷たい
「…俺のこと嫌いなのはいいよ、分かったから
でも会社は関係ないだろ…?
お前が入りたくて入った会社だろうし…
みんな、いい人達だろ?」
今のこの様子じゃ明日会社にくる確率は低い
なんとか説得して家には…
でも家に連れて帰ったところでそれは同じかもしれない…
いや、こんなフラフラして…ほっとけるかよ
居る場所が分かってないよりはいい
「…いいんだよ、会社辞めるつもりだから」
「え…」
「だから説得する必要ないんだよ…」
は?
…辞める?
また胸が締め付けられる感覚がした
俺の前からいなくなってしまう可能性を知って、苦しさに顔が歪んだ
潤がマンションとは違う方向に振り返り足を進ませ始める
待てよ…どこへ…っ
咄嗟に肩を掴んで足を止めさせる
「…そっちじゃないだろ」
「もう…俺に構わないでよ」
肩に掛かる手を払われ、再び足が動き出す
それをまた同じように肩を掴んで止めた
ここで諦めたらホントにもう潤に会えない気がして…
掴んだ肩の服をぐっと握った
黙ってその場で止まっている潤の表情が伺えない
今、どんな顔で立ってる?
「……じゅっ」
沈黙を破って話し出そうとしたら
潤がいきなり振り返って、俺のワイシャツの襟元を掴んだ
そのまま近くの壁に押し付けられる
「…くっ…」
掴む手に力が入っていて少し苦しい