トクベツ、な想い
第7章 7
「俺のことは…ほっといてよ…」
強い目力で睨み付けられた
でも声が微妙に震えている
その様子から原因はきっと、この前の言い合いだけじゃないのではと思った
何をそんなに…話ぐらいいくらでも聞いてやるのに
「…マンション、あっちだろ」
「俺の声聞こえてんの?
もう構わないでって言ってるじゃん」
「帰ろう、潤…」
「…うるさい」
「じゅ」
「黙れよ!!」
叫ぶような怒鳴り声に怯みそうになる
ちくしょう…負けねぇよ…
こんな目の前にいるのに連れて帰れないなんて
そんなことあってたまるか
「…せめて家には帰れよ…」
「しつこいな…もう会社辞める奴なんかほっとけよ…」
刺すような目とは裏腹に、襟元にある手が震えだしていた
攻撃的な声だって、言葉だって
本気で言ってるわけじゃないって…その手が言ってる
「会社辞めたって…友達だ…」
「…友達?無視されたのに?」
「……潤は嫌かもしれないけど
俺は…そう思ってるから……だから」
「違うよ…」
「…何が」
「……………俺は…違うよ」
そう言って潤の顔が近寄ってきた
薄暗い中、ホテルから漏れた光が潤の後ろにかかって逆光を作っていた
暗くてもよく分かるくっきりした二重が
俺の目に触れるんじゃないかってくらい近くて
柔らかいものが…俺の唇に…
え?
…え?
……もしかしてキスされてる……!?
「んっ…んぅ!」
数秒経って理解した状況に動揺して、反射的に顔を左右に振る
即、襟元にあった潤の手が頬を掴んで揺らせなくした
なんで?なんで!?
頭の中をその言葉で埋め尽くした
慌てて潤の両肩に両手を置き、力いっぱい押すがびくともしない
それどころか頬にあった片方の手が俺の後頭部に回りがっしりと掴んだ
唇は一段と密着する
もう片方の手は腰に回ってぐっと潤の体に引き寄せられた
予想だにしない行動にますます疑問が膨らむ
少ししてチュッと音を立て唇が離れていった
「はっ…っ…!」
離れてくれたところすぐに疑問をぶつけようと口を開く
そこを、待ってましたと再び唇で塞がれ開いた隙間から舌が侵入してきた