トクベツ、な想い
第8章 8
さっきとはうって変わって鼓動が早まる
「先輩、おはようございます」
「お、おはよ…ちゃんと来たな」
「もちろん、約束したし
それにEA部の人達に変な気遣わせちゃって…仕事も休んでた分、頑張らないと…」
眉をハの字に下げて反省の色を浮かべていた
ちゃんと分かっているようでホッと胸を撫で下ろす
「うん、頑張れ また頼るからな」
「…はいっ」
お互いに笑いあった
「そういえば部屋来てくれた時、色々買ってくれたんだな
その場で言えなくてごめん、ありがとう」
「あーいえいえ
俺も買ってきてくれてたみたいで、すいません
風邪じゃなかったですけど…はは」
「ホントだぞお前ー金返せよ」
「すいません、すぐ…」
「あーあー…冗談だって」
本気で財布を取りに行こうとする潤が素直すぎて
慌てて苦笑いしながら腕を掴んだ
それに反応してこちらに振り向く潤
キレイな顔、真っ直ぐな瞳
瞬間的に好きだって言われた時の顔と重なった
「…先輩?」
「へ…あ…」
掴んだ手をパッと離す
不思議そうに顔を覗かれて目が合わせられなかった
「…じゃ…それだけだから」
潤の返答を待たずに自分のデスクに走って戻った
イスに座って両手を自分の頬に置く
鼓動がうるさい
「もう…なんでだよ…」
「何が」
「うおっ」
後ろに座る待田がイスごと寄ってきていた
ガタッとイスを揺らして後ろを振り返る
「何、顔赤いけど…また風邪か?」
「ちげー…だろ…」
「?…ならいいけど」
不自然すぎる俺…
休憩が終わった合図で戻っていく待田を見て
自分も仕事に入ろうと、パソコンの画面に映る作成中だった企画書に目を向ける
…だがキーに置いた指は動かずそこにあるだけで
頭の中は先程のことで掘り起こされた昨日のことを思い出してしまっていた
それが面倒なことにキスの場面ばかり浮かんでくる
思い出すとよくあんなとこで…外で…
潤と…濃厚に…
「……え…あ"ぁーっ」
いつの間にか右手の小指がBACK SPACEを押していて
企画書の文字が半分程なくなっていた
キーから指を離すと周りは俺の声にどうしたと疑問の顔を向けてきて
すいませんと謝り対処した
もう…