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トクベツ、な想い

第8章 8






「泊まっちゃダメなの…?」


「…ダメです」



そんなはっきりと…

俺のこと好きだったんじゃないの?


声には出さなかったが
アルコールの力で少々態度がでかくなって、そんなことを思ってしまった

渋々起き上がり帰る準備をする


また一緒に飲めたしゆっくり話せたし、いっか



「じゃ…お邪魔しました」


「はい、階段気をつけて」



笑顔でドアを閉め
それほど酷くない足取りで階段を下る

今回の方が気まずくはなかったけど
酒のせいで気持ちの確認が疎かになった

なんだろ…この不完全燃焼感…








それをきっかけに俺達はお互いの予定が合えば飲みに行った

2回、3回と重ねていって

どこかで飲むってなった時は、潤も俺も気に入っているイタリアンレストランに行った


潤が前に予約をとってくれたところも行ってみたが、ちょっと距離があったので

会社帰りにはそこが自然と多くなった

いつしか店員に顔を覚えられて常連に

だがやはり人気店

早めに店を出ることがしばしばあった為、半ば当然のようにお互いの部屋で飲むようになっていった

ただお互いの部屋での宅飲みに限って暗黙のルールが存在していた


部屋に泊まらない、ということ


俺は潤の部屋に、潤は俺の部屋に泊まらない

気を付けて帰れる程度に飲む

羽目を外して飲んだとしてもこれは絶対


大体飲み過ぎるのは俺だが…


頑なに潤はこれを守った










―会社帰り、行き慣れたコンビニで手早く酒とつまみをカゴに入れ会計を済ませる


マンションのエントランスに入って
潤の部屋番号を入力しインターホンを押した

どうぞーという声と一緒に自動ドアがスライドする


何回目かの宅飲み

俺は今日、残業だったから潤の部屋で飲むことになった

実は最近ずっと俺の部屋で飲んでたので
潤の部屋で飲むのは久しぶりだった


元通りになってから結構経って
自他共に俺達の仲は良いと思ってる


あの告白の時からキスや触れるなどのアクションはしてこない

客観的に見ればただの先輩後輩にも見えるだろうが、俺達は友達として居た


飲む回が増える度に傍にいてくれるならそれでもいいかもって…

俺も思うようになって


膨らんでた気持ちはまるで安定期に入ったみたいに、今はこれで落ち着いていた

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