トクベツ、な想い
第1章 1
オネェのような口調で茶化す待田に
″そんなんじゃない″と反論してビールを口に運ぶ
「分かってねーな、お前会社1番人気だぜ?」
「ホントかよ、それ
お前だってイケメンだろ?」
「やだん」
「酔ってんの?」
くだらない話で笑いあってから
いつの間にか酔っている待田の腕を引き、お酌に回ることにした
さっきの女の子達のとこに行くと
待田が絡みだしたので俺はなんとかそれをフォローしつつ女の子達のお酌を終えた
次に、順番に男性の方を回っていったが
さっきとは違い、いやに大人しかった
そりゃそうか
連れ回しといて何だが大人しくしててもらった方が集中できる
「ん!?超イケメンじゃね!?」
「…っ!?」
ビックリ…したぁ…
大人しかった酔っぱらいがいきなり大きな声を出すから
お酌してる人のグラスからビール瓶が離れそうになった
「こぼすとこだったろバカっ!……あ」
視線を隣の待田に向け、見ている先にも目を追わすと
「……はじ、めまして
EA部の…松本といいます」
彼もビックリしたという顔で待田に挨拶をしていた
「ごめん、こいつ酔ってて」
「あ…」
待田の頭を軽く叩くと俺に気づいた松本くんがニッコリと笑う
俺もつられて笑顔を向けた
「何!?櫻井、知り合いなの?」
「さっきこっちの部長さんに紹介されたんだ
若い男性社員が入ったって
同じ20代だからって、それで…」
「俺だって去年まで20代だったのに!」
わっと両手を顔につけ泣き真似をする様子に
はぁっと溜め息を漏らすと松本くんのグラスにビール瓶を傾けた
松本くんはそのグラスを両手で持って受けた
「あ、ありがとうございます」
「いや、ごめん
こいつ飲み過ぎるとすげー面倒くさくなるんだ…」
「ふふ、面白いですね」
「…そう?」
苦笑いしつつ話していると
「いくつ?いつからいるの?彼女は?やっぱモテモテ?」
「やめなさい」
さっきより強めに待田の頭を叩き
松本くんに向け少し前のめりになっている体を後ろに引いた
「えっと、歳は24です
去年この会社に入ったんですけど、東京にはもうちょっと前からいました
彼女…はいません
モテているのか…は、よく…分からないです」