トクベツ、な想い
第1章 1
なぜか俺の方に向かって少年のような笑顔を向けながらさっきの質問に答えてくれた姿に
けなげーなんて思いながら待田を見る
待田も松本くんを知らなかったなんて…って
「ぐー…」
おいー寝てるー!
うまくバランスをとってあぐらをかきながら寝息をたてていた
なんて器用な…いやいや
「おい、お前が聞いた質問だろ、聞けよ!」
肩を掴んで前後に揺さぶってみるが
起きない…
「ごめん、ホントごめん」
先輩である俺達は見本にならないといけないのに
いくら無礼講っていっても、ねぇ…
「いいんです、気にしないでください
櫻井さんが聞いてくれてたし…
後で聞かれたら教えてあげてください」
ニコニコしながら言われると
これ以上待田を責める気になれなくて
「…ごめんなぁ…
松本くんの方がよっぽど大人だな
でも24てホント若いね」
「あ、でも櫻井さんも20代だって…」
「俺もうすぐ29だからさー
来年には30なんだよ、おっさんだよー」
やんなっちゃうよーと笑いながら話すけど
目の前に自分より若い人がいるとなんだか本当に歳を感じて…
30を迎えるのが少し恐怖にかわった
「全然おっさんじゃないですよ
きっと櫻井さんはいくつになってもキレイなお兄さんだと思います」
うおーめちゃめちゃいい子だ…
キレイな、なんてあんま言われたことないけど
こんなイケメンに言われると悪い気はしない
「ありがとう、そうなるといいな
松本くんにもこれからお世話になると思うから
その時は、待田共々よろしくね」
「はい、こちらこそ」
よし、と寝ている待田の頬を叩いて
半ば無理矢理起こすと元の場所へ足を進める
「んー…」
「お前飲み過ぎ」
「わりぃ…」
余程眠いのか力のない返事
足元をふらつかせながら自分の場所に着くとすぐ横になっていた
俺のスペースも空けてやる
良かったな、座敷で
グラスだけ持って壁に凭れる
寝ている待田と会場の様子を喉を潤しつつ見回していると
「あ、待田さん潰れちゃったんですね」
声のする方へ視線を伸ばす
俺の御膳の前に、うちの部で数少ない女性社員の内の1人がいた
「っ…そうそう!
なんかこいつ今日はやけに酒進んでるみたいで!」