トクベツ、な想い
第9章 9
抱き止められた時に反射的に掴んだ潤の服をぎゅっと握った
「ねぇ…教えて」
俺の体を更に引き寄せて答えをせがむ
お互いに膨らんだモノが布越しに当たった
「答えてくれないなら…いっそこのまま…ムチャクチャにしてやる…」
潤の腰が緩く揺れ始めた
「っ…え、や、やめ」
腰を引こうにも回されている手がそれを許してくれない
「ん…たの…っやめ」
「拒むくらいならっ!」
唐突に出された大きい声が耳を貫いた
瞬きも出来ずに目を丸くして
動きを止めた潤の顔が見る見る険しくかわるのを見る
「あんなキス、しないでよ…
友達でいられなくなるようなこと…しないでよ」
眉を寄せ、だが声は次第にボリュームを落としていく
「俺だって酒飲んだの見てるじゃん…
軽いキスで収めてくれれば…それなら酒の勢いでも冗談でもまだ笑って…」
小さくなった声は少し震えていた
俺の背中に両手が移動し体全体が広い胸板に包まれる
「俺が翔…先輩のこと諦め切れてないのだって、キスを抵抗し切れてないのだって…分かってたんでしょ…?
どうして…俺の気持ち、弄んでるの?
なんなの?…分かんないよ…俺はなんの為に…」
俺の肩に潤の顔が埋められる
今更、自分のしたことが潤を苦しめてしまったと分かって息が詰まった
ごめん…こんな顔に、気持ちにさせる為にしたわけじゃない
「どうして…」
「…ごめ」
「謝るんじゃなくて…理由を言ってよ」
「…それ、は」
「分かんないなんて…言ってほしくない
…酒のせいならそれで…
からかったなら……そう、言って…」
背中のワイシャツが強く握られる
あぁ…これじゃ今までと逆だ
どうしてそれをされているのか分からず
苛々して寂しくなって切なかった自分
今は潤がそうなって…
からかってなんていない、冗談でもない
酒の勢いじゃないって言ったら嘘になるけど
でもそれは単なるきっかけに過ぎなくて…
ただ止めようとしたのは
未知なる領域がいきなり来たから、どうしていいのか分からなかっただけ
俺は確かに潤を欲したんだ
それが必然であるかのように
もう認めろ
心が、行動が、示してるだろ
固い頭でいくら足掻こうが逆らえてないんだよ
…この想いを…伝えるんだ