トクベツ、な想い
第10章 10
手慣れたように昼飯が作られた
片付けたテーブルにチャーハンとスープとさっとした炒めものが置かれる
「簡単なものでごめんね」
「いや、十分過ぎるだろ…いただきます」
潤の前に両手を合わせて食べ始める
"うめー"と連発してレンゲを進ませると
潤が"うるさい"と嬉しそうに言って…
すごく幸せな空間だと思った
「はい、お茶」
「ん」
食べ終わって一息ついていた俺の前にキッチンから持ってきた湯呑みが置かれた
潤は食器を持って再び片付けに戻り
俺は今日の新聞を読んで出されたお茶を飲む
何この熟年夫婦みたいな行動…
昨日までの俺達はいずこ…
まるで今までこうやって過ごしてきたのではないかという程、息の合った自然さに驚いた
片付けが終わって新聞を読む俺の隣に潤が座った
「ありがと」
「お礼なんていいよ、好きでやってるんだから」
にっこり笑い俺の横から新聞に目を通しているので
「あ、ごめん…読む?」
「んーん、いいや」
差し出した新聞に首を振って、俺の肩に頭をコテッと置く
「何ニヤニヤしてんの…」
「んふふ」
「なんだよ」
新聞を閉じてテーブルに置くと潤の頭の上に自分の頭を乗せた
「翔くん…幸せだよ、俺」
「…うん」
「一時的でも…嬉しい」
「ちげーよ、本気だって言ったろ」
「…うん…ごめん…
でももしそう言われてもいいように今から充電するんだー…」
そう言って静かに瞼を伏せていった
完全に認められたわけじゃないのか…
潤の中ではまだこれが本物だという確証が得られてなくて葛藤が続いているみたいだ…
堪らず潤の片手をとってぎゅっと握る
どうやったらこの気持ちを全て伝えることができる?
潤の想いを聞いた後に言ったからって
俺の想いを同情だと受けとってほしくない
だって本気でホントなんだから
でも…俺達は男同士で
どう見たって、何を言ったってそれは変えられない
確かな愛を…目に見えて残すことはできない
結婚も子供も
女とは違う大きな差
目を閉じている潤の唇に俺の唇を落とす
ゆっくり瞼が上がって、キレイな二重を作って瞳が合う