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トクベツ、な想い

第10章 10






「好きだよ、潤」


「…うん」



目の縁に涙が溜まっていた

俺がいつ離れていってしまうのか不安なのか



「…なぁ」


「ん?」


「どうしたら信じてくれんの?」


「…どうしたの?」


「だって…不安なんだろ?」


「……大丈夫、今が幸せならそれでいいよ」



両想いなのに…やっと分かったのに…




「ずっと…一緒に…幸せにするよ…」


「…ふふ」



悲しそうに潤が微笑む


あぁ…俺はなんで男なんだろう…


どうすることもできないこの言葉が
心に忌々しく絡み付いてそう簡単にはとれそうにない


新たな課題










―なんの解決もしないまま、時は知らん顔で通りすぎていく

気付けば5月中旬


プロジェクトが大詰めに差し掛かり
6階のオフィスはてんやわんや

EA部も運用、保守部も残業に続く残業

休日出勤、泊まり込みは当然で


企画、開発部だってそれは同じだった



「会議会議会議、また会議…疲れんなー」


「プロジェクトが終わるまでの辛抱だって、待田の企画書いい感じにできてると思うよ?」


「本当?」


「おう、自信持って行ってこい」


「うしっ行ってきます」



会議室に向かう待田を見て
これくらい潤も単純だったら…としんみり思ってしまうが


それじゃ潤じゃないか…


仕事の合間に浮かぶのは潤のことばかり


たまに会社で見る潤に癒されてはいるけど

忙しくて2人では会えてないもどかしさ



「あー…はぁー…あー……」



キスしたい…










―自分の部屋に帰ってもパソコンを開いて
仕事をする


やがてパソコンの横のiPhoneがブブッと鳴った


タバコを片手に確認すると友人からのLINEで
結構前にした内容の返事だった

グループLINEで唯一こいつだけが返していなかったから予定が立てられずにいた



『翔ちゃん遅れてごめんね!
来週辺りなら大丈夫だと思うよ!!』

『やっとだな、分かった』

『相葉さん遅すぎ』

『ちょっと忙しくて、予定分かんなかったんだよ…』

『翔さん、俺もたぶん大丈夫だよ』

『おう、こっちも大丈夫そうなら計画立てるからまた連絡するな』



短いやり取りを終えてiPhoneを置いた


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