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家政婦の水戸

第1章 家政婦、その名は水戸奈津子

「お、おい紗知、いま、水戸さんがなんて言ったかわかるか?」


 あまりに嬉しくて、娘にそうたずねた。


「ええ〜、今のは“ね゚”としか聞こえなかった」


「お前、よくそれを発音出来たな……えっ!? わからなかったか?」


 どういう事だ?


 よく大人の耳と子供の耳では、音の捉え方が違うことがある。


 よく、携帯カメラのシャッター音が、人によっては別のものに聞こえたりする。


 あれと同じようなものか。


「あの、水戸さん、とりあえず冷蔵庫の中を見ていただいて、水戸さんの得意なものを作って下さいよ。今日はお任せしますよ」


『ま゚』


 今のはそれにしか聞こえなかった。


「ただいま〜」


 おっと、高2の娘、恵実が帰ってきた。


「おう、おかえり」


「あ、お父さん帰ってたんだ。ただいま、くっさっ!!」


 いきなりかっ!! 反応、ダイレクトすぎるぞ。


「なんか、道端に放置された、ひかれた猫の死骸に三種類の香水一瓶ずつ全部ぶっかけた匂いがする」


 具体的すぎるわっ!!



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