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家政婦の水戸

第1章 家政婦、その名は水戸奈津子

 恵実は2階に上がった。


 紗知はテレビで歌番組を見ている。


 だが、紗知が見たいのは、その後のテレビドラマ「ガーディスト〜君ヲ守ル」だ。


 録画してるのに、リアルタイムで見ている。


 俺はその間、薬物の注射だ。


 これをやると、スッとするんだよ。





 糖尿でインシュリン射ってんだけどね。


 水戸さんはキャベツをみじん切りにしている。


 そこはやはり家政婦。見事な手さばきだ。


 ただ……目は、まったく手元を見ていない。


 正面を向きながら、リズミカルに包丁を鳴らしている。


 それ……見てるのが怖いぞ!!


 それ、絶対、指削るやつだろっ!!


 頼むから、手元を見ろっ!!


『ま゚』


 承知しましたじゃねえっ!!


 てか、こっちを向くな。


 こっちを見ても、目線がどこに向いているかわからん。


 なんなんだこの人は……だが、腕はいいな。


 昔、妻が生きていた頃を思い出す。


 なぜ、死んじまったんだ……。


 出来るなら、生きて戻ってきてくれ……。



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