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家政婦の水戸

第10章 水戸さん、プロレスを見る

 一人の女子レスラーが剣幕をたてて、挑発している。


「おい、お前がお客さんじゃなく、レスラーだってのは、わかってんだよ!! なにしに来たんだよ!!」


 リング上は、選手が二人と、レフェリーがジッと見ているだけだ。


 他の女子選手も騒ぎだした。


「普通じゃない雰囲気出してるもん、絶対にお客さんじゃないよ」


「だって、うちのこれだけの選手に囲まれて、否定もせずに黙ってこっち見てるし……」


「でも、見た目おばさんっぽいよね? ベテラン?」


 見ると、カラフルな花柄の覆面と、目と口が銀色の網目になってかくされた、ピンク色の覆面。


 花柄の方が、携帯電話を出して、なにやら打ちはじめた。


 そして、その画面をレスラー達に見せた。


「え、なになに? 私達はフリーの、水戸フラワーマスクと、スーパー桜餅マシーンだって!? やっぱ、こいつ、レスラーだよ!!」


 少ない人数の会場が、騒然となった。


 プロレス雑誌の記者らしい人間も、カメラをむけはじめた。


「おい、お前、文句あるんだったら、私達と試合しろよ!!」


 おそらく、女子部の中でもエース的な存在と思われる選手が、前に出て決戦をしろと申し立てる。


 すると、水戸フラワーマスクらしき女が立ち上がった。



『ま゚』


 あんたかいっ!!



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