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家政婦の水戸

第12章 さようなら水戸さん

 紗知の声は嬉しかった。


 普通ではない自分を、まるで母のように慕ってくれた。


 水戸さんは、懸命な笑顔で言った。


「ま゚っ」


 とびっきり、美味しい物を作ろう。そして、恵実にも認めてもらおう。


 水戸さんは買い物に出掛けた。



 だが、その様子を、こっそり見ている者がいた。


「見付けた……あの腐った女だ……」


 以前、山野家に強盗に入った時、水戸さんに追い出され、バイク水戸さんに出会い、自らの乳首を破壊した男。


 郷東洋義だ。


「そうだそうだ、確か、ここだったよな。あの匂いのお陰で、カレーやコーヒーの香りも、訳がわからなくなっちまったしな」


 なにかをやり返さないと、気がすまない。


 かといって、正面から行くと恐ろしい。


「やつに、深い後悔と苦痛を与えてやるわ。俺はこの乳首の痛み、忘れてはいないぞ」


 ただ、乳首に関しては、水戸さん、バイク水戸さんは手を出していない。


 小さなリュックを背負い、郷東は、山野家に侵入した。


 水戸さんは、なにも知らずに、献立を考えていた。


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