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家政婦の水戸

第12章 さようなら水戸さん

「あ、ごめんなさい。水戸さん……立てる?」


『ぬ゙』


 水戸さんは、とりあえず起き上がり膝立ちになった。


「あ……」


 つぐみは見た。


 水戸さんの両足の、かかとの上に亀裂が入っていた。


「踏ん張りがきかないの? てか、痛くないの水戸さん?」


 水戸さんは携帯電話に文字を打つ。


[痛みはない。私の体、ボロボロだわ]


「……ちょっと待って」


 つぐみは男性店員に交渉し、店の端に置いてある台車を借りれないか、頼んでみた。


「あぁ、あれね。いいですよ」快く了承してくれた。


「すいません、必ずお返ししますので」


 この、借りた台車に水戸さんを乗せて、山野家まで押していこうというのだ。


「あれ!? 東さんに、水戸さん!?」


 二人に声をかける者が、いる。


「え?」


『ま゙』


 そこにいたのは、大きな白いマスクと、サングラスに、深い帽子を被った女性だ。


 二人はすぐにわかった。


 その人物、同じ栗壱屋の家政婦、大神音子(おおがみねこ)だった。


「ちょっとちょっとちょっと、どうしたのこれ?」


「ねこちゃ〜ん、よかったぁ〜」


 つぐみは安堵の表情を見せた。



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