テキストサイズ

家政婦の水戸

第12章 さようなら水戸さん

「火事?」


 大神はマスクをずらし、獣のように突き出た鼻で匂いを感じた。


「大変っ!! 火事だよ!! 間違いない!」


「えっ!! じゃ、早く入って消さなきゃ」


 二人の声に、辺りは騒然となる。


 すると、先程、つぐみに声をかけられた女性が声を上げた。


「ちょっとちょっと、お庭のサッシのところ!!」


 女性が指を差すところに目をむける。


 ガラスの向こうに、カーテンに火が燃え移っているのが、確認できた。


 家の中が火事だ。


『か゚さ゚い゙ほ`う^ち゚き(消防に電話)』と水戸さんはカバンから携帯電話を出した。


『ん゚に゙ぃ』


「ちょっと、あなたじゃ話にならないでしょ!!」と大神が電話を取る。


「中に人は?」


 つぐみは聞くが、水戸さんは指を差すだけ。


 大神が電話を口から離す。


「ちょっと、ここら辺の住所がわからない、誰か説明して!」


 水戸さんが手を伸ばす。


「いや、あなたは話にならないって!!」


「じゃあ、説明してあげる」とおばさんが電話を取った。


 燃えていくであろう家を、水戸さんはただ見ているだけだ。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ