テキストサイズ

家政婦の水戸

第12章 さようなら水戸さん

 すると、まだ煙が残る家の中から、救助隊の声がした。


「いたぞーっ!!」


 救助隊の手により、ビニールシートにくるまれたなにかが、運び出された。


「えっと、ご主人ですね」と警察官の一人が、羊に声をかける。


「あ、はい」


「大変、申し訳ないのですが、こちらを御覧いただいて、確認を……」


 隊員がビニールシートをめくる。


「……なんですか?」


 黒く炭化した足だった。その足首に、普通ではそこにないものがあった。


「これ、ボールペンですか?」


 羊は足に刺さっている、棒状のようなものを、指差した。


「そのようですね。なにを思って足に突き刺していたのか、わかりますか?」


 そう警察に言われても、理由がわからないし、そんな事をしそうな人は一人しか思いつかない。


「あの……たぶん、うちで家政婦として雇っていた、水戸さんかと……」


「家政婦ですか……足にボールペン刺すんですか?」

『ま゙』


「刺すそうですよ……あれ、え?」


 なにかが返事をした。


 無事なのかと、顔の方をめくってみた。


 だが、想像以上に、見るも無惨な、黒こげの顔だった。


「水戸さん……う……」


 羊の心に、こみ上げるものがあった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ