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家政婦の水戸

第12章 さようなら水戸さん

「とりあえず、司法解剖は必要はないと思いますね。この場合は、火災による焼死となりますので」


 それを聞いて大神は思った。


 この人に死因と呼べるものが、あるのだろうかと。


 出来れば、そっちを調べてほしい。ああなる前に、なにがあったのかを知りたかった。


「待ちなさい、まだ起きちゃダメだ!!」


 そんな声が飛んできた。


 顔や腕に軽い火傷を負い、一酸化炭素を吸って気を失っていた恵実が、立ち上がって、フラフラと歩いてきた。


「恵実さん、ダメよ、そんな体で……」


 あわてて大神とつばきが、恵実の体を支える。


「水戸さん……は?」


 か細い声で、そう聞くと、つばきが「むこうに……」と指を差した。


「め、恵実……まだ動いちゃダメだろ」


 父の羊が、心配そうに駆け寄る。


「水戸さんに会わせて……お願い」


 今度は羊の肩を借り、ゆっくりした足取りで、ビニールシートの方に歩み寄る。


 黒く焼け焦げ、白い歯しか見えていない水戸さんの顔を目の当たりにし、恵実の目から涙が溢れ出した。



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