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家政婦の水戸

第12章 さようなら水戸さん

「いや、しかし、心臓は動いてないのに、手が動いてます……」


「えっ?」


 ダランと垂れ下がる、炭になった腕を見た。


 微かに動いているのが、見てとれた。


「あれ? 水戸さん? 生きてる?」


 死後硬直かとも思ったが、そう言えば、返事も少し聞こえたような気もしていた。


「うわうわうわっ!!」


 救急隊員が騒ぎ出した。


 水戸さんの腕が激しく動き出した。


「ほらぁ〜、やっぱりゾンビじゃないですかぁ〜」と警察官はニヤニヤとする。


「いや、あんたは、もういいよ! てか、あんたこの状況で落ち着きすぎでしょうが!!」


 羊は水戸さんの手を握った。


「水戸さん、水戸さん、水戸さん!!」


 羊は声をかける。


 大神も、つばきも、近寄った。


「水戸さーん! しっかり!! 大丈夫、あなたは死なない!!」


「おきて!! きっと、この、つぐみもそう願ってるから!!」


 二人は必死に声をかけた。


 大神が天を見上げた。


 夜空には、白く明るい月が光っている。


「お願いっ!! 月の化身よ!! 水戸さんに力を!!」




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