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家政婦の水戸

第12章 さようなら水戸さん

 願いが届いたのか……月から太い光の柱が降りてきた。


 そして、それは、白くキラキラと輝き、水戸さんを包むように光の筒が被さる。


「え、あれはなに?」


 つばきが月を指差した。


 なにかが降りてきた。


 それは、一糸まとわない、裸の人のようだった。


 頭には金色の輪が浮かび、背中に羽をつけ、ヒラヒラさせながら手には弓矢を持っている。


「えっ!? 天使!? マジで天使が降りてきたっ!!」


 実在した。


 だが、天使は天使だが、それが近付くにつれ、今まであった天使のイメージが美化されたものだと、気付かされた。


 腹の出た中年の平社員のような裸の親父が、バーコードの頭を光らせ、黒ぶちのメガネの奥に見えるいやらしい目でこちらを見ている。


「天使のイメージっ!! コントでもベージュパンツ穿いてるのに、毛までハッキリじゃねえか!! 胸毛とすね毛を剃れっ!!」


 羊もいろいろ我慢はしていたが、天使のビジュアルだけは我慢出来なかったようだ。


 天使は水戸さんの近くまで、降りてきた。


「こいつ、よく見ると、頭の輪っかの後ろ、針金がついてるぞ……これでいいのか?」


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