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家政婦の水戸

第2章 長女、恵実と水戸さん

 恵実のハンバーグが焼き上がった。


 焼き色もまんべんなくついて、食欲をそそる。


 恵実のやつ、いつの間にか、ここまで出来るようになってたんだな。


 すっかりドヤ顔を決めこんだ恵実は、水戸さんを指差した。


「水戸さん、みんなお腹空かしてるんですよ。早く焼いて下さいよ。私が作ったハンバーグが冷めちゃうじゃん」


「……」


 水戸さんは黙ったままだ。


 まさか、怒ったのか?


 この人が怒ると、違う意味で怖いと思う。


『ピピー』


 炊飯器の音だ。


 ご飯が炊けたんだな。


 水戸さんが突然、イナバウワーのようにのけ反っている。


 ご飯が炊ける、あの音が嫌いなようだ。


「どうしたの水戸さん、ご飯が炊けたんだよ」


 水戸さんの専属通訳、紗知が、水戸さんの背中を押して元に戻した。


 よろけながら、水戸さんは『バルス』と言った。


「壊れそうだったんだって」


 それ、あるアニメの崩壊の呪文だろ?


 水戸さん語に同じ単語があったんだな。


 ご飯が炊けてから、水戸さんは冷蔵庫から、トレイに乗せた、ハンバーグの種を出した。


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