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家政婦の水戸

第4章 水戸さん怒る

 恵実と、その連中は、そのまま水戸さんから離れていった。


 山野宅に戻ると、主で父の山野羊がいた。


 和室で長財布を持ちながら、紗知と向かい合っている。


「あ、水戸さん」と羊が声をかける。


 そして、スッスッと歩み寄ると、長財布を水戸さんに突き付けた。


「水戸さん、あの、疑うってわけじゃないけど、一応、聞いておきたいんだ。この財布の置き場は知っているかい?」


 水戸さんは、やや頭を傾げる。


 だが、知らないわけではない。


 見覚えはある。


『む゚れ~』


「紗知、なんて言ってる?」


「見覚えはあるって、言ってる」


 羊の目付きが変わった。


「水戸さん、この財布は一度もあなたに見せたことはないよ。なぜ知っているの?」


 疑ってないことはない。間違いなく疑っている。


『び゚』


「おい、紗知」


「今日、ここで自分の荷物を取る時に見たんだって」


 羊は、その長財布で手のひらをパチンと叩いた。


「タンスの中に入っているのに、なぜ見るのかなぁ……開けた?」


 水戸さんは頭を横に振る。



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