テキストサイズ

家政婦の水戸

第4章 水戸さん怒る

 羊は電話をかけた。


 だが、いくら待っても恵実は出て来なかった。


「くそ……出ない」


『み゚を゙だす゚』


 すかさず紗知が訳す。


「我慢は体に悪いから、トイレに行ってくださいって」


「そう言う意味じゃないんだけど……恵実が電話に出ないんだ。どこ行ったんだ?」


 母親がいなくなったいま、父として、話を聞きたい。


 父親として、手の行き届かない点もあったかもしれない。


「考えたら……長女だから、しっかりしろと言い過ぎたのかもしれないな。自由を奪っていたのかもな」


「でも、お姉ちゃんがそんな不満を言ってるのを、一度も見たことないよ。きっと、なにか理由があるんだよ」


 紗知も、姉、恵実のことが心配でたまらない。


『どぅる゚』


「えっ!? 水戸さん、買い物途中で、お姉ちゃんを見つけたの? なんか、数人の派手な女の子らと一緒にいて、なにやら話ながら歩いていったんだって」


「えっ!? 水戸さん、恵実を見たのか」


『め゙ぇ〜』


 紗知が訳す前に、すかさず羊が言った。


「ハッキリ言ってくれ水戸さん。俺の名前が羊と書いて“よう”だから、バカにしてるだろ」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ