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家政婦の水戸

第4章 水戸さん怒る

 大神の耳の先は尖り、前に突き出た口からは、牙が伸びる。


 腕も毛に覆われ、爪が鋭く光る。


 毛むくじゃらの獣と化した大神は、月に向かって遠吠えを上げたあと、水戸さんに近付いた。


「さあ、変わったよ。この匂いを覚えたらいいのね」


「いや、喋りは普通かいっ!!」と思わず、羊はそう叫んだ。


 大神はブラシの匂いを嗅ぐと、キリッとした目付きで、羊を見た。


「わかりました」


「わかったんですか? て、なにが?」


 大神は羊を指差した。


「あなたのです」


「へっ!?」


 突然、大神はブラシの持ち主が羊だと告げた。


 羊はしばし呆然とした。


 だが、すぐにそれは驚きに変わる。


「あっ、そうだ……今朝、うっかりそのブラシで、頭をといたよ……凄い!! わかるんだっ!?」


「だからですね。ご主人の匂いがしたのは……でも大丈夫。このブラシのもう1つの匂い、とらえました。わりと、近くにいますよ」


「どこにいるんだ?」


 大神は指差した。



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