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家政婦の水戸

第4章 水戸さん怒る

 指の先にいたのは、紗知だ。


「おい、紗知……これはどういうことだ?」と羊が聞いた。


「あ、ごめんなさい。私、こんなブラシ使ったことがなかったから、試しにさっき頭をとかしたんだ」


「いや、現実に向き合えば最もややこしい現象に出くわしている状況で、さらに難航にするようなことをするんじゃないっ!!」


 大神はブラシを示すと、もう一度匂いを嗅いだ。


「さっき、ずっと持っててもらってたので、水戸さんの匂いもしますわ」


「いや、結局、元の持ち主の匂いが出てないじゃないですか……」


「いえ、ご主人。わかります。ちょっと失礼します」と大神は羊に近寄った。


「えっ!? ちょ……」


 羊はやや逃げ腰だったが、よくわからない恐怖心からか、体が動かなかった。


 そして、大神は羊の頭を匂った。


「最初にブラシを使った、ご主人の頭に、持ち主である娘さんの匂いが移ってます。娘さんはあの方向、やく1300メートル先にいます」


「ほんまかいなっ!!」



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