ねぇってば
第8章 悪
「普通はあります…」
声はこもっていたけどちゃんと聞こえた
「たとえば?」
顔を覗き込もうとした時
しゅうかちゃんは顔を上げて俺と目を合わせた
真っ赤な目
「おかあ がいて おとう がいて、
ご飯作ってくれる人がいて、
お休みの日どこか連れていってくれて、
朝、おはようを言って、
夜、おやすみを言って
お出かけする時には、
いってきます と おかえりなさい
を言ってくれる人がいることです。
らいにはいません。
ずっといません。」
「…たしかに、俺には母ちゃんも父ちゃんもいます
おはよう、おやすみ、いってきます、おかえりなさい
全部言います」