先生、好きです。
第1章 学校
「…っと…、先客がいたかな?」
パッと起き上がって振り返るとそこには白衣に身を包んだ長身の男が立っていた。
「………加神…先生……?」
この男、加神 拓人は変人として有名な保健医だ。
「あれ?君、たしか……」
「…この前仮病使って保健室のベッドにいた天知です。」
「そうそう!!天知 蓮哉君!!…て、やっぱりあれ仮病だったんだね。」
数日前、保健体育の授業が持久走だと聞いて、仮病を使い保健室を利用した。
あの時はこの先生、すごく心配してくれた。
氷だ、冷却シートだ、と手厚く看護してくれた。
妙に慌てて、氷を用意しながら何故か火傷をするし、冷却シートの袋で指を切るし。
終いには僕に…
"ゴメン…指に絆創膏貼ってくれる…?"
と、指を差し出してきた。
もう呆れるしかない程変人だった。
「……僕、移動しますね。」
この先生には関わらない方が良い。
そう思い、僕は屋上を出ようとした。
「あ、待って!!」
「はい?」
くるりと後ろを振り返ると同時に、先生に腕を捕まれた。
「天知君、ご飯まだでしょ?食べてから行きなよ。」
笑顔で僕を見ながらそう言うと、腕を引いて屋上の柵に寄りかかった。
腕を放してくれたので、取り敢えず隣に寄りかかった。