テキストサイズ

ご主人様は突然に

第7章 《未定》

~カズ side~



「ミカコさん、これ」


「やだ!これ、もしかして
駅前のエリーのケーキ?!」



カオルが渡した手土産を見て

お義母さんは興奮している。



エリー?

聞いた事あるような……



「そうそう。ミカコさん
この前食べたいって言ってたから」


「もぉ~ホントにぃ?
すごく嬉しい~!
さすがカオルくんだわ~!
……ウチの男どもは
こういう気遣いができないから
だめなのよねぇ……」



お義父さんとマサキさんに

鋭い視線が向けられる。



心なしか、俺も見られてるような……



まさか……

その¨男ども¨に

俺もメンバー入りしてます?!



ていうか俺も

手土産持ってきましたよね。



チラリと視線を移動させれば

お義母さんに渡した俺の手土産は

キッチンカウンターに置かれたまま。



それに気づいたカオルが

さりげなく情報をくれる。



「……ミカコさんは
和菓子より洋菓子派ですもんね。
その中でもモンブランが一番好き」



……なるほど。

¨お義父さんが好きな和菓子¨

じゃだめだったって事ね……



思わぬところで失敗した。



「そんな事まで覚えててくれたの?」


「そんな事じゃないですよ。
ミカコさんにはお世話になってますから
大事な事は忘れません」


「ふふっ、ありがとう。
コーヒー淹れるからカオルくんは
座ってていいわよ~」



カオルの言葉にお義母さんは

すこぶる機嫌がよくなった。



ていうか……



カオルのお義母さんの扱い方が

手馴れていて驚きを隠せない。



お義父さんとマサキさんは

こういうのは見慣れているのか

お義母さんの機嫌がよくなって

安堵しているようだ。



ハンカチで冷や汗を拭っていると

なんとでもないという顔をして

カオルはお義父さんの横に座り

俺を見てにやりと笑う。



「久しぶり。
元気……ではなさそうだな。
あんま食べてねぇだろ」


「え……」



確かにここ数日、食欲がない。

でもそれを一瞬で言い当てるなんて

どんだけ洞察力あるんだよ……



そう思いながらも



「こういう時に食べれるほど
肝は据わってねぇんだよ」



軽口を叩けるまでに

俺の精神状態は落ち着いていた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ