ご主人様は突然に
第2章 波乱の同窓会
一度実家に帰宅してから
ナナコと改めて家を出て
同窓会が開かれる店を目指す
¨鶏勝―とりしょう―¨
聞いたことのない店だけど
ナナコは知ってるようで
美味しいよ~と笑っていた
実家から意外と近いそこは
その名のとおり焼き鳥店で
店外までいい匂いが漂っていた
「時間ピッタリ。さっ入ろ」
「あ、うん」
「こんばんは~」
「「「 いらっしゃいませ~! 」」」
引き戸を開けてナナコが挨拶すると
数人の店員の声が聞こえた
こういう騒がしい店は
嫌いじゃないけど
初めて訪れると緊張する
しかも今日は同窓会。
久しぶりに会う同級生たちは
どんな風に大人に成長したのか
逆に私は私だと気づいてもらえるか
不安と緊張でいっぱいだった
「八時で予約してる
佐藤の連れなんですが……」
近くにいた女の子の店員に
ナナコが声をかけると
その子は愛想良く微笑む
「佐藤様ですね。
みなさん揃われてますよ。
お席は二階です、ご案内しますね」
案内されたのは二階奥の個室で
ふすまに近づくと
中がガヤガヤしてるのが分かった
「こちらの席はお座敷になっています。
靴を脱いでお上がりください」
言われたとおりに靴を脱いで
ザザッとふすまを開けると
視線がこちらに集中された
「おー、ナナコじゃん」
「ナナコ遅いよ~」
「え~?時間ピッタリでしょ~」
ナナコがハハハッと笑いながら
足を進めて部屋に入ると
次は私に視線が注がれた
「あれ……もしかして岩熊さん?」
「えっ!まじ!?」
「あっ、マナカ!」
アヤが私に気づいて近づいてきた
仲良しのアヤがいてホッとすると
アヤがにこっと笑って
私の腕を引き、部屋の中央に誘導する
「みんな~マナカ来たよ~」
「アヤっ恥ずかしいって……」
さらに注目されて恥ずかしい私は
コソッとアヤに耳打ちするけど
私の話なんか聞いちゃいない
「マナカはここね~」
そう言って
真ん中辺りの空いてる席に
私を強制的に座らせた
この席で……決定?
チラッと視線を動かすと
左隣と正面には男の子が座っていて
目を見開いて私を凝視していた。