ご主人様は突然に
第2章 波乱の同窓会
凝視されてることに
いたたまれなくなった私は
右隣に座るアヤに再び耳打ちする
「ねぇ私、端の方が……」
「だめ。久しぶりなんだし
少しはみんなと交流しないと」
「交流って言ったって
ほとんど話したことないし……」
「なに緊張してんの。
いつもどおりのマナカでいいから。
てか、梅酒でいいよね?」
「あ、うん」
いつもの癖で頷くと
アヤはにこっと笑い
ナナコに私の注文を伝えていた
ナナコはさっきから
みんなにドリンクの注文を
聞いて回っている
さすが女幹事。
仕事が出来ますね。
……じゃなくて!
ナナコやアヤは誰とでも
仲良くなれるタイプだろうけど
私は旦那のカズとしか
付き合ったことがないし
とにかく男に免疫がない。
男の兄弟がいても
それとこれとは別の話だ。
もう一度視線を動かすと
左隣と正面の男の子が
チラチラとこちらを見ていて
私はぎこちなく微笑んでみせて
とりあえず視線を逸らした。
私だってもう生娘でもないし
一度話してしまえば
すぐ慣れるんだろうけど……
まず、なにから話せばいいのやら。
¨久しぶりだね。元気?¨
そのあとが……分からん。
最初は男の子より
女の子の隣や正面が良かったなぁ
とため息を吐いていると
「はいマナカ、梅酒」
ナナコが梅酒を渡してきて
アヤの隣に腰を下ろしていた
「みんな飲みもん回ったー?」
私の左隣に座っていた男の子が
突然立ち上がってみんなを見回す
もしかして……
チラッと見上げてると
その男の子が乾杯の音頭をとる
「えー、どうも佐藤です!
今回は一年ぶりの同窓会ですが
予想よりたくさん集まってくれて
幹事の僕は安心しました~
今日は食べ飲み放題なんで
満足してから帰ってください!
それじゃ……カンパーイ!」
この人が、幹事の佐藤くん。
みんながグラスをぶつけ合う中
ボーッと佐藤くんを見上げていると
「岩熊さん、乾杯しよっ」
佐藤くんは腰を下ろしてすぐ
ビールのグラスを
私の梅酒のグラスにぶつける
「乾杯!」
そう言って佐藤くんは
人当たりの良さそうな顔で
にこっと微笑んだ。