ご主人様は突然に
第1章 戦力外通告!?
いやいや、待て待て待て、私。
離婚届を突然渡されて
気が動転して聞き間違えたのかも。
「ご、ごめん、よく聞こえなかった。
も、もう一度言って……」
「……浮気相手を、妊娠させました」
にんしん……
ニンシン………
妊娠っっ!!
聞き間違えじゃなかった……
私、地獄耳だった。
「責任取るつもりなんだ……
だから別れてくれ!」
「はあ!?」
「本当にごめん……」
「えっ?待って、意味分かんない。
ごめんってなに。冗談でしょ?
責任取るから別れてくれって、
センと私はどうなるのっ!?」
テーブルをバンッと叩きつけ
声を荒げて椅子から立ち上がる私を
見上げて旦那は口を開く
「養育費や当面の生活費は
なんとかするから……許してくれ!!」
「許すもなにも……
それ以前にあんたセンの父親でしょうが!
謝れば済むと思ってんの!?」
「センにも、お前にも悪いと思ってる。
だけど……もう無理なんだっ!」
「はあ?無理ってなにが?」
旦那は¨しまった¨とでも言いそうな顔で
目を泳がせている
「そ……それは………」
「ハッキリ言ってよ!」
「俺……俺もう………っ、
お前じゃ起たないんだっっ!!!」
……は?起たない?
なにが起たないのよ。
「俺たち、もうずっとレスだろ。
お前のこと嫌いになったわけじゃない。
でも……女として見れなくなった」
なーんだっ
起たないってムスコのことかあ~~
……じゃねぇっ!!
女として見れないぃ?!
「病院も行ったんだ。
いわゆる¨妻だけED¨らしい」
「なにそれ……」
「そのままの意味。
妻にだけ……勃起不全になるってこと」
はああああ!?
妻=私にだけ勃起不全ーーッ!?
カンッ
音を立てて指輪がテーブルに置かれた
「お前もまだ若いし……
いい人見つけて幸せになってくれ!!」
「え……ちょっ……!」
逃げるように旦那は家を出て行き
伸ばした腕が空中でさまよう
「もう若くねぇよっ!!」
もうすぐ二十九歳
息子はもうすぐ八歳
三十路まで一歩手前の春先に
旦那から戦力外通告を受けました。