ご主人様は突然に
第1章 戦力外通告!?
「セン?それ誰から聞いたの?」
「あのねっ、おじーちゃんがいってた!
ママをなかせてパパはわるいやつだって!」
心当たり、見事に的中。
あんの……クソ親父!
孫になに聞かせてんだよ!
「セン~それおじーちゃんの嘘だよ~?
ほら、おじーちゃん髪の毛が変でしょ。
あんな髪の人の話は聞いちゃだ~めっ!」
「おじーちゃん、うそつきじゃないよ!」
センがギュッと眉を寄せて
クリクリの瞳を揺らしながら
必死に私の服を引っ張る
あまりにも必死に引っ張るもんだから
私の方が悪者みたいに思えてしまう
どんだけセンの信頼を得てんだ、クソ親父。
その信頼、崩してくれよう。
「ん~……
じゃあ、明日おじーちゃん家行って
嘘か本当か聞いてみよっか?」
「うん!いく!」
センの顔がパァァッと明るくなって
つられて私も笑顔になる
くそぉ~可愛いなぁ~~
だらしなく笑いながら
センの頬に自分の頬をスリスリさせる
「ママぁ~くすぐったいよぉ~」
幸いなことに
センは頬スリスリを嫌がらない
だからスリスリし放題!
……私は親バカだ。
いや、バカ親?
可愛い息子がいて、まじ幸せ。
「よしっ、おじーちゃん家行くなら
もう寝ないとだめだよ。あ、オシッコは?」
「うん!トイレいってからねるね!
おやすみなさ~い!」
「おやすみ~」
リビングを出て行くセンを見送り
携帯を操作して耳にあてる
「……あ、私。
明日そっち行ってもいい?
うん、センは昨日から春休み。
家出る前に連絡するから。はーい……」
ふぅ……
通話が終わって自然とため息が漏れた。
離婚になるかもって話したら
クソ親父は喜ぶだろうけど
母はまず反対するはず
……離婚かぁ。
¨なるかも¨じゃなくて
¨確定¨に近いよなぁ。
どこぞの女とすでに子作り済みだし……
クソ野郎ッ、バカ野郎ッ!
妻だけEDってなんだよ?
浮気する前に話せよ。
そもそも浮気すんなよ!
「……ははっ、しょーもなっ……」
笑っておかないと泣きそうだった
¨泣いたら負け¨のような気がして
必死にくちびるを噛みしめた。