ご主人様は突然に
第1章 戦力外通告!?
わが家から徒歩で五分以内
私の実家がある。
実家の門が見えてくると
センが走り出し
そちらに目を向けると
ロン毛の強面な男が立っていた
ロン毛はセンを見つけると
両腕を広げて地面に膝をつく
センは吸い込まれるように
その腕の中に勢いよく飛び込む
「おじーちゃんっ!」
「お~よく来たなあ~
センは相変わらず可愛いなあ~」
「くすぐったいよ~」
ロン毛がセンの頬にスリスリしている
……遺伝かよっ!
スタスタとロン毛に近づき
腕を組んで見下ろすと
ロン毛が顔を上げる
「……クソ親父様。ただいま」
「おー、クソ娘。お帰り」
ロン毛は返事をするとすぐ顔を下げ
センへ頬スリスリを再開させた
「スリスリするなら私に許可取ってよ。
センは私の息子なのよ、クソ親父様」
「許可ぁ?そんなの知らねぇよ。
センが決めることだろ、クソ娘」
「ちょっと。クソクソ言わないの!!
セン~、こっちおいで」
「あっ、おばーちゃんだっ!」
すぐ近くに母がいて
センはロン毛の頬をグッと押しのけて
母の元へ走る
「セン~……」
ロン毛は眉を下げて
物足りなさそうな顔をしていた
ふっ、残念。フラれてやんの。
ほくそ笑んでいると
母の腕の中にいるセンが振り返る
「ママ!ママ!
おじーちゃんにあれ、きかなきゃ!」
「なにセン。おじーちゃんになにか
聞くことがあって遊びに来たの?」
母の問いかけにセンはうん!と頷く
いや、セン。その話題早くない?
昼食食べてからゆっくり……
と思ってたんだけど。
「なんだ~?聞きたいことって」
ロン毛は話題にされたのが嬉しいのか
にこにこしながらセンに近づく
「あのねっ、おじーちゃんが
うそつきじゃないってはなし!」
「ん?嘘つき?」
「うん!パパが¨うわき¨して
ママがなかされたってはなしだよ!
うそじゃないよね?ほんとだよね!」
その場の空気がピキーンと凍りつく。
ロン毛は顔がひきつっていって
にこにこしていた母の顔が
般若のように歪んでいくのが分かった。