ご主人様は突然に
第4章 佐藤の憂鬱
「ちょっと佐藤ッ!」
ボーッとしながら待っていると
焦った様子の赤坂が
息をきらして走ってきた。
その顔を見るに
やはりお怒りのようだ
「どういうことっ!?」
「あー……
電話で話したとおりで……」
力なく応えると赤坂が眉をひそめた
「ここに、カオルがきて?
マナカを実家に送ってくって?」
「そう……」
小さく頷きながら
腕を組んだ赤坂越しに
公園の入口の方に目をやると
のんびりと歩いて近づいてくる
内野の姿があった
相変わらずマイペースだな……
「そう、じゃないでしょ!
マナカ、カオルん家から飛び出して
きたんだよ?
なのになんでカオルに任せるわけ?!」
赤坂が俺を見下ろしながら声を張る
「いや……その……俺が悪くて」
「はあ?」
「送り狼ならぬ……その……
¨迎え狼¨になりかけまして……」
正直に話すと赤坂は目を見開いた
その後ろから
ブハッと吹き出す音が聞こえて
そちらに目をやると
内野が肩を揺らして笑っていた。
「ハハハッ、ウケる。
佐藤も普通の男やったか~」
「ちょっとアヤ!」
「てか、私らが佐藤のこと
勝手に¨安全¨って決めつけてたのが
そもそも悪いしね」
「それは……確かに。ごめん佐藤!」
赤坂に謝られて逆に焦る
「俺は別に……」
そう言うと内野が
ポンッと俺の肩を叩いた。
内野はなにも言わないけど
その表情はにやついていて
内心で¨ドンマイ¨
と言われてるような気がした。
なんか、内野って……
落合に似てる……?
似てるってより、
落合の女バージョン?!
苦笑いしてると
赤坂が内野の手を引いた
「アヤ、にやついてないで
さっさとマナカん家行くよっ!!
佐藤はここでね。じゃお疲れ!」
そう言って俺から離れていく。
そうだよな……
まだ俺は¨部外者¨なんだよな。
当たり前のように誘われない現実が
憂鬱でしかない
岩熊さんとの間にある境界線
俺はこれから
その境界線に近づけるのだろうか。