ご主人様は突然に
第5章 まさかの許嫁!?
公園を出てからカオルは
無言で私の手を引いて歩いていた。
触られるのはもちろん嫌だけど
足の長さが違うから
カオルの歩幅とペースで歩かれちゃ
たまったもんじゃない
実際カオルについてくのに精一杯で
私の呼吸はかなり乱れてる。
「カオル!手ぇ離してよっ!」
ご近所に迷惑にならない程度に
声を出してみてもカオルは無視で
ズンズンと足を進めていく
この……自己中オトコッ!!
「離してって
言ってんでしょう、がっ!!」
「っ―――!!?」
ボカッと鞄で目の前の頭を殴ると
やっとカオルが足を止めて振り返った
「いってーよっ!!殴るか普通!?」
後頭部を擦りながら
恨みがましい表情をするカオルを見て
私の気分はスッキリ
フフフ……ざまあみろ。
「ごめんね~?普通じゃなくて。
でもアンタ歩くの早いのよ。
ついて行けないから手ぇ離して」
ごめんね、とは言いつつも
全く謝るような態度じゃない私に
カオルがため息を吐いた
「……ゆっくり歩いてやる」
「いや、そういう意味じゃ……」
手を離してって言ってるのに!
「うるさい。黙ってついてこい」
「はぁ……
アンタのそういうとこ、ホント嫌い」
私のため息混じりの言葉に
カオルの眉がピクッと動く
「いっつもそう。
周りのことなんか考えずに
好き勝手動いてさ……」
「俺は、俺なりに考えてるけど?」
「それが伝わってこないの!
私から見たらアンタ、
ただの自己中オトコだよ?!
もう少しカズを見習って―――」
声を上げると
私の手首を掴む手に力が込められた。
手首は痛くない
けど、カオルの表情が曇り始めて
¨しまった¨と思った。
カオルはカズと比べられるのが嫌いで
昔からこうやって私が口を滑らすと
ガラにもなく切なげに眉を寄せて
私を真っ直ぐ見つめてくる。
表情の歪み具合には段階があって
数時間前にカオルん家にいた時に
見た表情よりも酷くて
カオルがいやしく微笑み
私は身震いした。
だって、こんな時は大抵―――
「……そんなに俺に
可愛がられたいわけ?」
私の身が危ない合図だから。