ご主人様は突然に
第5章 まさかの許嫁!?
「なになに、セン。
ママとカオルくんが同じ匂いするの?」
「ちょ、ミカコさん!」
椅子から立ち上がり
センに近寄ってきた母に気づいて
やっと意識を取り戻した。
よく見ればいつも冷静なカオルが
わずかに焦ってる気がした。
……え?なに、どうしたの?
「うん!さっきね、
ママにギュッてしてもらったとき、
ママいつもとちがうにおいした!」
「えっ!」
「それがカオルくんと同じなの?」
「うん!へんだよね!」
カオル同様、焦って声を出した私を
センも母もなぜか無視する。
「そうねぇ、変ねぇ。
いつの間にかそんな……
¨仲良し¨になったのかしらね?」
母に至っては
心なしか顔が緩みきっていて
嫌な展開しか脳裏に浮かばない。
「いやいやいや、ナイから!
誤解中の誤解だから!!」
「ふーん……?
そうなの?カオルくん」
「え……あ、はい……」
こらカオル!
そこで曖昧にしたら怪しいだろ!!
「お母さん、ホントやめて。
カオル、アンタも否定してよ!」
「ああ。ミカコさん、
今のところはなにもナイです」
「今のところはってなに!!」
「カオルくんって正直よねぇ。
そういうとこ好きよ」
「ありがとうございます」
すっかりいつもの調子のカオルは
にこっと微笑んでいた。
……だめだ。
これじゃ不毛な会話が続くだけだ。
「あーもうっ!もう帰りなよ!
セン、ママが抱っこしてあげるから
カオルから手離してごらん?」
さっさとカオルを追い出そうと
センに近寄り手首を軽く掴むと
センは私の顔を見てから
カオルの顔をジッと見つめる。
「カオルは、ママのことすきなの?」
あどけない質問、キターーー!!
そうか、そうきたか。
まだ小さい小さいと思ってたけど
こういうのも分かってしまうのね……
愛息子の成長ぶりに
嬉しいやら切ないやら複雑な私。
そして空気を読まないカオルは
余計なことを口走る。
「ああ、好きだよ。それにそのうち
センのパパになりたいと思ってる」
「えっ、ホントに?!」
「えっ……?」
カオルの言葉より
センの言葉や嬉しそうな表情に
私は驚きを隠せなかった。