ご主人様は突然に
第5章 まさかの許嫁!?
「ちなみに、何回会ったことあんの?」
「えー?何回かしら。
数えたことないし分かんないわよ」
「分かんないほど?えー………」
ふてくされてセンの方に目を向けると
遊び疲れたのかセンが
カオルに抱っこをせがんでいた。
「セン!抱っこならママがっ!」
焦って近寄るとセンは首を横に振る。
「カオルにだっこしてもらうの!
いいよね?カオル!」
「ああ、いいよ。おいで」
「ちょっとカオル……」
よっと声を出して
カオルがセンを抱き上げると
センは満面の笑みを見せた。
「うわ~たかい!ママ~みてみて!
すっごくたかいよ~」
「あ……うん、高いね……」
カオルに抱き上げられた瞬間
センが本当に嬉しそうに笑うから
私はそれ以上なにも言えなかった。
「カオルっておじーちゃんより
おおきいんだね!すごいや!」
「大きいとすごいのか?」
「うん!カッコイイ!!
カオルみたいにおおきくなりたい!」
「そうか。じゃー好き嫌いせず
なんでも食べるんだな。
そうすりゃ大抵は大きくなれっから」
「そうなんだ!わかった!!」
なにその親子みたいな会話。
本当ならパパが……
カズが抱っこしてるはずなのに。
カズは育児に協力的ではあったけど
ここ一年ほどはそこまでだった。
仕事が忙しいってのもあって
センと関わるのは
たまの休日のほんの一時間とかで
センはなにも言わなかったけど
パパとの時間が減るたびに
私に甘えることが増えていった。
なにかを言ったところで
変わらないだろうと思ったから
私はカズを責めなかった。
その代わりにセンのことは
いつだって抱きしめてきた。
センの顔を見れば
抱きしめて欲しいんだなって
なにも言わずとも分かるから。
「カオル、いいにおいするね!」
「そう?」
「うん!……あれ?
ママもおなじにおいしたよ!なんで?」
「なんでって……」
カズがセンを抱き上げるなんて場面
最後に見たのはいつだっけ?
カズのことで頭がいっぱいな私は
母がにやりと笑ったことにも気づかず
ボーッとしながら
センとカオルを見つめていた。