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「うらやま」

第2章 ヨシくんの記憶

そしてそれから10年後・・・・


ボクは社会人になって三年が経っていた


車も2台目に代替わりして、同じ職場の女の子とも付き合ったりしていた



月に何度かホテルに行ったりもしてたけど、その彼女は車の中でするセックスが好きだった


「だって誰かに見られちゃうかもしれない緊張感があるじゃない?」


性に好奇心を持っていた彼女はよく人里離れた山でカーセックスを求めてきていた


男のボクからしたらホテル代も助かるし、それによく応じていた



仕事が終わったら二人でドライブ


新しいポイントを見つけるのも兼ねたドライブだ



あの裏山はとっくに切り崩されていた


大きな国道も出来たし、山は平らにされて新興住宅地に様変わりしていた


あの広場も、崩れそうな崖も、草原のような場所も、底無し沼も、あの池も


みんな無くなってしまった


住宅地の周りは何周もの路線バスが通り、中心には大型ショッピングセンターも出来ていた


裏山はまったく消えてしまっていた



集落があったであろうあの池の奥は広い拓かれた場所になっている


何年後かに電車を通して駅が出来るらしい


集落の人たちは立ち退き料をもらったか、もしくは近くのマンションをあてがわれたりしたのだろう


マンション、団地、ハイツ、病院つき老人ホームなど大きな建物がタケノコのごとくニョキニョキと乱立していった


あれからヨシくんには会ってない



今は30歳ぐらいになってるハズだ






その日の晩も彼女とカーセックスをしていた


場所は駅の候補地の平坦に切り崩された場所


マンションからは少し離れていて、いまから第二住宅地を造成しようとしている場所なんで誰も近づかない


大きな木の陰に車を停めて、ボクは助手席の彼女に挿入していた


激しく動いて車が揺れても構わない

どうせ誰も見てないんだから


でももしかしたら同じような考えの奴が他にも居るかもしれないし、花火で若い子達が集まってるかもしれない

そんな「もしかしたら誰かに見られるかも」というユルい緊張感の中でのセックスだった


そんなとき、ふと彼女が外を見て「・・・あっ・・・」と言った

腰を動かしていたボクも助手席側のウインドウを見た

そこにはやけに浅黒い顔の成人男性が立っていた・・・




【おわり】

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