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「うらやま」

第2章 ヨシくんの記憶

当時はすでに中学生になっていたボクだけど、六年も前の出来事はうろ覚えでしか覚えていない


でも久しぶりの裏山の光景、

久しぶりのヨシくんの顔を見て、いろんな記憶がよみがえってきた





ボクは少しホッとした



アキちゃんの事故はボクかもしれないと勝手に思いこんでいたから


じゃあ翌日のアキちゃんの事故は何だったのか


ボクは翌日の日曜日は大阪の親戚の家に行っていたけど、アキちゃんはひとりで裏山に入っていったようだ


もしかして?


ボクは山道を一緒に歩いていたヨシくんと思わしき男性に声をかけた


「落ちたのは・・・・あなただけだったんですか・・・・?」


その男性はさっきまで独りでぺちゃくちゃ喋っていたくせに、何も言わなくなってしまった



もしかしたら・・・・・翌日の日曜日、ふたりはここで遊んでいたのかもしれない


そして前日のようにふざけて落としあいをしてたんじゃないか?


そして事故があったんじゃないのか?



ボクは隣にいる男性がだんだん怖くなってきた


それからボクも黙ってしまった


裏山の草原のような広場まで来たとき、いつのまにか男性のすがたは無かった・・・・





それからボクはブラックバス釣りを止めてしまった


なんか、小さい頃からの罪悪感が無くなったものの、ヨシくんの存在が新しい恐怖心になってしまった



大きくなってから、あの裏山の奥のほうにはボクたちの街よりもずっとずっと前からあった集落があったらしい


街の案内地図にも載っていない


中学のとき、雨の日の昼休み図書室で時間を潰していた


友だちが彫刻関係の本だったか、絵画の本だったかを見ていてそのときに裸婦のスケッチをしている光景の写真があった
写真はモデルを囲むように何人も人が集まってる様子の写真で、ヌードは修正もされてなかった
芸術関連の本だったら黒く塗りつぶされたりはしないんどろうか

それからは男子何人か集まってはしょっちゅう図書室でその本を見るということがあった

そんなとき自分の住んでる地域の古い地図の本を見つけて「ここオレんち~!」とか言い合ってた

そのとき裏山の奥に小さな集落があると記載されていたんだった

一度しか見なかったので集落の名前も覚えていない

でもボクは直感で「きっとヨシくんはここの集落の人なんだ」と思った

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