テキストサイズ

「うらやま」

第2章 ヨシくんの記憶

田舎だったのでちょっと自転車を漕げば池がたくさんあった


まわりは山と田んぼだらけ


田んぼの近くには溜め池があって、万が一日照りが続いても溜め池から水を引っ張れるようになっていた


とにかく池は本当にたくさんあって、10~20とかのレベルではなくて、100以上は溜め池があった



近所の古ぼけた釣具屋さんも以前は鯉釣りやヘラブナ釣りの道具ばかりだったのに、だんだんとカラフルなブラックバスの道具が増えていってた


昔の釣り道具は全体的に茶色っぽい

それがまるでスキー用品やスノボ用品のようにカラフルなロッド(竿)やルアーがたくさん並ぶようになったのだ


あげくに「ルアー専門店」なんてのも出来始めていった

当時はロードサイド店舗が注目され始めていた時期で、何にも無い一本道だったのが数年で本屋、ガソリンスタンド、大型のデンキ屋、ホームセンター、コンビニなんかがぎっしり建ち並んだ時期だった


本屋にいけば「月刊ブラックバス」みたいな本がたくさん並び、本格的なマニア本だけでなくボクら向けの初心者向けやらファミリー向けの雑誌が次々と創刊されてた


ぼくらは学校が終わるとすぐに自転車に乗ってブラックバス釣りを楽しむ毎日だった



でも正直いってそんなにカンタンに釣れなかった・・・



もともと日本にいる魚ではなくて、外来種だったので

「誰かが持ち込まないとブラックバスは居ない」のだ


都会の池には誰かが放流したりしてたのかもしれない

うちの田舎のそのへんの溜め池にはブラックバスが居なかった!


だからぼくらのポイントは校区からどんどん遠く離れていった

近くじゃダメだ!遠くのダムまで行かないと!


週末はオヤジの車に乗って遠くのダムまで行けたけど、平日は自転車でうろうろしてばかり


学校で誰かが「○○池でブラックバスが釣れた!」って情報が入ると、みんなこぞって釣りに行った


始めの頃はみんなで自転車移動してみんなで釣りをしていたけど、だんだん情報を先取りしたくてこっそり釣りに行くようになってきた


みんなが誰しも「俺が最初に□□池で釣った!」と言いたいんだ



それはボクも同じで池、用水路、沼、川いろんなとこを探しまくっていた



そのとき、ふと裏山の奥の方にも池があることを思い出した


ストーリーメニュー

TOPTOPへ