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桜 舞う

第1章 桜 舞う

「そ、それからずっと笑ってないんですか?」
「笑ってない」

言い切った課長は柔らかい笑顔。

笑ってるよー、今。
かっこ良いよー。

のんきにそんなことを思いながら課長の笑顔に見惚れていたら

「それ以降、社内で笑ったのは酒々井の前が初めてだな」

課長が目じりを下げて、艶やかに笑みを深めた。

う……
ドキドキする

でも、
……ちょっと、待って。
今の、課長……え?
どういう意味?

ドキドキが苦しくなってきたよ?
か、顔が熱いっ。

軽くパニック状態に陥った私に課長がクスクス笑う。

「可愛いな。酒々井」

へっ!?
可愛い?
私、が?

言われ慣れない言葉に気持ちが舞い上がる。

ね、課長、コーヒーに何か入ってた?

「今度、改めて食事に誘う」

……っ!?

「今の案件終わったら少し時間に余裕できるから、その時な」

は、い……
……はい?

課長が残りの缶コーヒーを飲み干して立ち上がった。
慌てて一緒に立ち上がる。

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