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桜 舞う

第2章 おまけ

腕の中で酒々井が息を飲むのが分かった。まぁいきなり抱え上げられたらそうなるだろう。

そっと下ろして後ろを振り返り、困惑顔の平坂に『しまった』と気付く。酒々井の事しか見えてなかった。
悟られたかもしれない……
内心気にしつつも表情は崩せない。
「じゃあ平坂、遅くなるようだったら交代を寄越すから」
なるべく抑揚を抑え淡々と伝えると、平坂も表情を改めて頷いた。
「はい」
そのまま靴を脱いでシートへ上がったところで
「あの、ありがとうございます。く、靴、靴脱がない方が……足、冷えると寒くなります」
酒々井が声を掛けた。
「えっ?そうなの。」
慌てて靴を履いた平坂に
「はい。……よ、良かったら、これ使いますか?」
恐る恐る取り出された二つのカイロ。
酒々井の温もりを平坂に分けているようで気に入らない。だからといって口を挟める訳もないが。
無言で平坂を見ていたら、一瞬窺う様な視線を投げられた。
「ありがとう。でも大丈夫。買ってきたから」
見るからに残念そうな目に、知れず彼を威圧していた事に気が付いた。

……我ながら、大人気ない

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