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桜 舞う

第2章 おまけ

酒々井の事になると余裕のなくなる自分に呆れるしかない。
「ぁ、はい……」
平坂に断られ、明らかにテンションの落ちた酒々井に声を掛けた。
「行くぞ、酒々井」
カイロを見詰めたままの彼女の右腕を取る。
「あ、はい。平坂さん、ありがとうございます」
弾かれたように顔を上げ、酒々井が平坂にお礼を述べた。
腕から手首へと掴む位置を変え、平坂の返しを待たずに歩き出す。
歩きながらも再度お礼を言っているのが聞こえたが、歩みを止める事が出来なかった。
公園を出てぶつかった赤信号にようやく足を止める。
場所取りに関してだけじゃなく、今日の自分の態度に反省する点が多過ぎて。
「悪かった」
まず口に出た言葉。でも突然の謝罪が酒々井には伝わるはずもなく、不思議そうに見上げられてしまった。
「入社してから毎年、朝から場所取りしてくれてたって」
大きな瞳でじっと俺を見つめ。
「……はい」
頷いた酒々井の表情が曇っていく。反らされた視線に酒々井がネガティブな思考になりがちな事を思い出す。
「……おい、暗くなるな。何かまた悪いこと考えてるだろう」

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