
桜 舞う
第2章 おまけ
それが今では……
見下ろす瞳が不意に揺れた。
じわりと赤くなった頬。
しまった。
つい、見詰め過ぎた。
「行くぞ」
内心の動揺を悟られないよう、少し強引に酒々井の手を引いた。
「酒々井はどうしてそう自信がないんだ?」
焦る余り、一方的に話し過ぎた。黙り込んだままの酒々井に掛ける言葉もなくなって。前を見据えて社を目指す事にした。
連れて戻らなければならない上司としての思いと、このまま二人で歩いていたい一人の男としての思い。明らかに勝る後者を振り切るように歩き続けつつ、握る手首を離せない。それは社に着いてからも変わらなくて。
離さなければ酒々井を困らせる。分かっているのに手を緩める事さえ出来ない。
受付の上林が一瞬目を瞠目させたのが目に入った。
あぁ、これで今夜のうちに尾ひれの付いた噂が回る事は確定だ。
……いっそ本当にしてしまおうか
そんな風に考えてしまう自分が浅ましい。
若い頃はもっと余裕があったように思う。上司から笑うのを禁止され、意識して恋愛を避けていたせいか、三十半ばにもなってスマートに振る舞えない。
酒々井とは一回り近く離れているというのに……
見下ろす瞳が不意に揺れた。
じわりと赤くなった頬。
しまった。
つい、見詰め過ぎた。
「行くぞ」
内心の動揺を悟られないよう、少し強引に酒々井の手を引いた。
「酒々井はどうしてそう自信がないんだ?」
焦る余り、一方的に話し過ぎた。黙り込んだままの酒々井に掛ける言葉もなくなって。前を見据えて社を目指す事にした。
連れて戻らなければならない上司としての思いと、このまま二人で歩いていたい一人の男としての思い。明らかに勝る後者を振り切るように歩き続けつつ、握る手首を離せない。それは社に着いてからも変わらなくて。
離さなければ酒々井を困らせる。分かっているのに手を緩める事さえ出来ない。
受付の上林が一瞬目を瞠目させたのが目に入った。
あぁ、これで今夜のうちに尾ひれの付いた噂が回る事は確定だ。
……いっそ本当にしてしまおうか
そんな風に考えてしまう自分が浅ましい。
若い頃はもっと余裕があったように思う。上司から笑うのを禁止され、意識して恋愛を避けていたせいか、三十半ばにもなってスマートに振る舞えない。
酒々井とは一回り近く離れているというのに……
