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桜 舞う

第2章 おまけ

その仕草が可愛くて、つい声を漏らして笑ってしまった。
「可愛いな。酒々井」
そう告げると益々頬が赤くなる。

そんな反応されると期待したくなるのだが?

頭の中で問い掛けて。
「今度、改めて食事に誘う」
気付けばそう口にしていた。
反らされていた視線が飛んで戻ってくる。大きく見開かれた瞳は嫌がっているようには見えない。
「今の案件終わったら少し時間に余裕できるから、その時な」
強引に押し切って缶コーヒーを飲み干した。
椅子から立つと酒々井も跳ねるように立ち上がる。
「あ、あの……何で、ですか?」
若干怯えた様な眼差し。
今までの自分の態度を思えば仕方がない。分かっていてもハッキリ断られたくはない。
「では、私は仕事に戻る。酒々井はここで暖まってろ」
質問には答えず、言葉を返した俺に酒々井が困惑した様に眉を下げる。
「は、はい……」
でも同じ問いを繰り返す事なく頷いて。
「あ、あの、仕事……ひ、平坂さんは?」
自分の事より平坂の事を気に掛ける。誰に変わってもらおうと酒々井はその人を心配するのだろう。
これは課のイベントで、平坂は自ら望んで来た。酒々井一人が負担する必要はないのに。

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